fc2ブログ

「東大話法」にだまされるな!

安冨 歩 (著)『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』(講談社+α新書、2012/9/21)を読みました。著者の話をフリーライターがまとめて、著者が加筆訂正したものなので、読みやすく、内容が分かりやすいです。


「東大話法」新書2冊



同じ著者による関連本に、
『原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―』(明石書店、2012/1/7)、『幻影からの脱出―原発危機と東大話法を越えて』(明石書店、2012/7/19)と『「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂』(講談社+α新書、2013/6/21)があります。

真実や自分の信念を曲げてでも、「自分の『立場』に沿って都合のいい話をデッチあげる」という「東大話法」は、現実には日本の社会に広く蔓延しています。

1.「東大話法」のルール
著者が上げる「東大話法」のルールは以下のとおりです。
1 自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する
2 自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する
3 都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事する
4 都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す
5 どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す
6 自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する
7 その場で自分が立派な人だと思われることを言う
8 自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する
9 「誤解を恐れずに言えば」と言って、ウソをつく
10 スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる
11 相手の知識が自分より低いと見たら、なりふり構わず、自信満々で難しそうな概念をもち出す
12 自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する
13 自分の立場に沿って、都合のよい話を集める
14 羊頭狗肉
15 わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する
16 わけのわからない理屈を使って相手をケムにまき、自分の主張を正当化する
17 ああでもない、こうでもない、と自分がいろいろ知っていることを並べて、賢いところを見せる
18 ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところに突然落とす
19 全体のバランスを考えて発言する
20 「もし◯◯◯であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける

2.「東大話法」の由来と影響
「東大話法」の特徴である「徹底的に不誠実で自己中心的でありながら、抜群のバランス感覚で人々の好印象を維持し、高速事務処理能力で不誠実さを隠蔽する」能力に秀でているのが、頭の回転が速い東大の学者や東大出身者に多いことから、著者が「東大話法」と名づけたそうです。現役東大教授がよくぞここまで書いたと思うほど、実名入りで具体例が数多く取り上げられています。

著者が「東大話法」に気付いたのは「福島の原発事故」で、東大系の「御用学者がこの話法を使って、ウソをつき、責任の所在を曖昧にし、国民をケムにまいてきた」からです。

もちろん、東大以外の大学人にも、大学を出ていない人にも「東大話法」を得意とする人がいます。大きな会社や機関に属する人は、周囲に思い当たる人が必ず見つかるはずです。

「東大話法」を支えるのが、日本人の精神世界に巣食う「立場至上主義」ですが、「非効率的な会議」、「社畜」、「熟年離婚」、「新卒者の退社」などの背景にもなっていると著者は言います。
その一部を補足説明しますと、「熟年離婚」は、立場主義の妻が定年で「立場の抜け殻」になった夫に嫌悪感を爆発させることが原因で、「新卒者の退社」は価値創造につながらない立場主義の仕事に意味を見出せなくなることが原因です。

「東大話法」への対策もこの本の中で提案していますが、割愛します。

3.私の体験と感想
私の約40年間の会社生活を振り返ると、上記の「東大話法」のルールを駆使する同僚・先輩や上司がたくさんいました。特にエリートと目される人や役員に多かったように思います。

しかし、会社に例外として一人「東大話法」を決して使わず、前人未到の成果を出し続けた技術系役員がいて、常務取締役までなりましたが、「東大話法」を駆使する「立場至上主義」のボスにより潰されました。その技術系役員の発言や判断は、論理的で分かりやすく、部下としては仕事がしやすく、成果を早く出しやかったのです。組織内の「東大話法」が作業能率を落とし、会社の人材育成や事業発展を阻害することを、身をもって数多く体験しました。

この本を読んで、真実を隠し、無責任で、自分の立場だけを守ろうとする「東大話法」による議論が、今までも長く日本中で行われてきていて、今も続いていることを、自分の体験や知識と重ねて、以下のように芋づる式に、気づかせてもらいました。

私が敬愛する松原正は、「同じ保守系の学者や評論家の言論の論理矛盾、道義不在、知的怠惰を論破し、斬りまくった」と本ブログに書きました。斬られたた学者・評論家・作家などには東大出身者が多く、「東大話法」を大なり小なり使っていたと思い当たりました。そうなのです。「東大話法」は、松原正が嫌う「論理矛盾、道義不在、知的怠惰」の言論なのです。しかも、松原正を追い出した日本の言論会を席巻する話法なのです。

近現代史を見わたすと、日本では、当時のエリート集団が個人と組織の「立場」を守るために、真実を隠して、多くの名もなき人びとを塗炭の苦しみに陥れた事例が数多くあります。たとえば、戦時における無謀で稚拙な作戦、長期にわたる公害タレ流し、長引いたハンセン病隔離政策や薬害など。

これらは、きっと、声の大きな「東大話法」の駆使者が、組織を牛耳っていたためでありましょう。問題は、当時の最高レベルの高等教育を受けた人が、数多く集まる組織や集団で引き起こされたことです。日本の教育、人材育成法、人材登用法、組織運営法に重大な欠陥が潜んでいるのではないでしょうか。

日本は、バブル崩壊後に、学会、政界、産業会などの広範囲の分野で、仕事の生産性が落ち、職場の活気が失われ、世界をリードするような新機軸を打ち出せないで長期低迷していると言ってよいでしょう。この本は、そのように日本の活力を低下させた大きな原因と処方箋を示した、貴重な「警告の書」であると思います。



関連記事
スポンサーサイト



テーマ: オススメの本の紹介 | ジャンル: 本・雑誌

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する