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大隅半島は「建国神話の始まりの聖地」(2)

前回、ご紹介しましたように、大隅半島には、記紀に書かれている建国神話の初期の旧跡や関連神社がたくさんあります。それらを巡って歩くと、頭の中で当時の神々のストーリーや生活が彷彿としてきます。

いったい、最古の長編小説である源氏物語より約300年前に、記紀のような話を創作できた人がいたのでしょうか。私は、日本神話は実際の歴史上のできごとが核となって、説話や想像などが付加されて伝承されたものであると思っています。

しかし、現在、記紀は皇室の権威付けのための作られたフィクションであるとか、古事記に記載されている神武天皇の寿命が137歳、孝安天皇の寿命が123歳、崇神天皇の寿命が168歳であるのが間違いの大きな根拠とされて、応神天皇以前の神代史が否定される傾向にあります。まことに残念なことです。

歴史研究者の間では主流派ではありませんが、安本美典氏によりますと、古代には1年を2歳と数えるような数え方があったようです。
川崎貴一氏の論考(歴史通 2015 November)からの孫引きですが、安本氏は天皇のお年が、《 「二倍」になっている理由について、次のように考えている。『「古事記」には、十三人の天皇がなくなられた日が記されている。ふしぎなことに、ひとりのこらず、月の十五日以内になくなられている。このようなことが偶然におきる確率はきわめて小さい。計算してみると、一〇〇〇回のうち、〇.五回以下である』 そして、「仮説」と明記して、次のように推測する。『半月をもって一ヶ月と数えていたという仮説である。すなわち、月が完全に満ちるまでを一ヶ月とし、ついで、月が完全に欠けるまでを、一ヶ月としていたのではないかと思うのである』 『半月を一ヶ月と数えていたと考えるならば、天皇のお年が、二倍になっていることを説明できると同時に、天皇のなくなられた日について、確率的にきわめて起こりにくいことが起こっていることを、うまく説明できる』 》

さらに、安本氏は、数理・統計学的手法により、神武天皇と天照大神の活躍の年代を推定し、卑弥呼が天照大神であるという仮説を出しています。このような合理的で説得力のあるアプローチにより、将来、神話が史実として甦ることを私は期待しています。


安本美典著作
安本美典氏の著作の一部


神話学の巨匠と呼ばれたジョーゼフ・キャンベルによりますと、神話には4つの機能があるそうです。すなわち、私なりの理解の表現も加えると、第一に神秘的な役割(あらゆる物象の底にある神秘の認識への導き)、第二に科学が関わる未知への神秘の付与、第三に社会的な機能(社会秩序を支え、それに妥当性を付与)、第四に教育的な機能(人間らしく生きる教え)。
神話をこのような視点から見直し、その価値を認めることは大切であると思います。


神話の力
ジョーゼフ・キャンベル他著「神話の力」


現在、私の周りを見渡しても、神話の機能を教えてくれる教師や、地域の指導者はいません。ところが、私の祖父の時代は今とは違って、小学校の遠足の時には、神武天皇のご誕生伝説地などに行って、教師から関連する話を聴いて、子供たちは想像力を膨らませて、自然に情操教育もなされていたようです。


神武天皇関連遺跡
神武天皇関連伝説地


大隅に来て日が浅いためか、私は大隅で神話の神々を称える祭を見聞きしたことがありません。昔は祭がたくさんあったはずですが、無くなったのでしょうか。そうだとすれば、残念なことです。祭には、地域の文化や伝統を後世に伝える重要な機能があります。今後も気をつけて関連情報を集めたいです。
その点、宮崎県には、神話に関わる祭が多く、伝統文化を大切にする風土があるように思います。

また、神話に関する伝承話が、関連の旧跡がある地元には伝わっているはずです。神々が活き活きと甦ってくるような伝承話を掘り起こして、後世に伝えていただきたいです。もし、すでにそのような資料があれば是非読んでみたいです。

さらに、大隅に来て、先人の功績を伝える博物館などが無いことにも驚きました。郷土の尊敬できる先人を介して、郷土愛が強まり、人々の結束が広がり、人物を育てます。薩摩の明治の偉人達や山口県萩の吉田松陰を思い浮かべれば、分かることです。
偉人を想起させる事蹟は、そうでない景色や物と違って、何度見ても頭の中で想像力が喚起されて膨らみ、飽きの来ない観光資源や心の琴線に触れる教育資源になります。木造の小さな家にすぎない「松下村塾」がまさにその見本です。


明治3元勲誕生地石碑
西郷隆盛・大山巌・東郷平八郎の誕生地


建国神話の神々も、きっとそのような想像力をかきたててくれるはずです。そのためにも、大隅の神話に関わる祭を復活させ、地元に伝わる神話の神々の話を掘り起こし、さらに郷土の偉人を顕彰して、後世に伝えていただきたいと願っています。


5柱の神々
大川内神社に祀られる神々



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テーマ: 鹿児島 | ジャンル: 地域情報

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