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勉強の基礎となる「読解力」に気付かなかった学校教育

新井紀子著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」は衝撃的な内容の報告書です。この女性数学者が全国的な大規模調査をして出した結論は、日本の中高生の多くは読解力がなく、教科書の文の意味が理解できないということです。

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これからはAI(人工知能)の時代と言われ、人がしている今の情報を伝達するだけの仕事や定型的な仕事は機械で代替されます。しかし、AIには、言葉の意味を理解し状況を判断することが苦手という問題があります。このような時代に人間は読解力をつけて、AIができない仕事に就かなければなりません。この本は、日本の学校教育の問題点と今後の指針を提示しています。

この学者の凄い所は、多角的に読解力を評価する読解力テスト「RST;リーディング スキル テスト」を開発し、国内に読解力を診断する体制づくりを進めている、その実行力です。
読解力テスト(リーディングスキルテスト;RST)の受検料金は1,500円/人です(新井紀子氏が設立した「教育のための科学研究所」のホームページより)。

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読解力テストの一例;中学生の正答率は38%、高校生の正答率は65%。恥ずかしながら、私は③にマルし、読解力不足を反省しました。

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質問の意味も十分に理解できない子どもに、試験勉強を強いても理解力や能力は上達しにくく、子供に苦痛を強いることは明らかです。勉強の基本である、文の意味が分かり、イメージできるようにする指導方法を見つけてほしいものです。

7分野の読解力を学年別に評価した表です。中学校では学年が上がると正答率も上がるが、高校では横ばいになる傾向があります。そのため、中学時代に読解力を上げる必要があります。高校では遅いのです。

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「AIに負けない子どもを育てる 」(新井紀子著、東洋経済)は、生徒の多くが教科書の文の意味が理解できないと指摘した前著の続編です。読解力アップの実践法が提案されています。

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読解力アップの手軽な方法はなく、正確に「書く」「読む」ことが基本です。授業で聞いたことをノートに書くこと(意味が分かると書きやすい)、読んだ文章の要旨を書くこと、本をゆっくりでも理解しようと心がけて読むことは、正確に意味を理解する訓練になります。この本には、望ましい授業内容の具体例や年代別の対策も書かれています。
最近は教師が作った穴埋めプリントやドリルが教材として多用されていますが、これはお手軽で時間短縮になる一方で、読解力アップの妨げになっているそうです。

読解力が高いと偏差値の高い学校に入れます。全国の2万5千人を対象とした読解力調査でわかったことです。
読解力が高い学生ほど容易に東大に入れます。暗記に頼らずに、効率よく受験勉強が進むためでしょう。超有私立中高一貫校に入る12歳の生徒は、東大に入れる読解力が身についていることも分かりました。なお、東大に入らなくても、各分野で能力向上し、活躍することが期待されます。

読解力により選べる進路が決まり、読解力がない受験生は暗記に頼らざるを得なくなります。読解力をアップすることは、学歴だけでなく、仕事の幅を広げ、望ましい進路の多様性を拓くことにも繋がります。

最近、教育熱心な自治体や学校で「読解力アップ」の取り組みが始まったので、今後、実証的な裏付けのある有効な対策が出てくるものと思われます。
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テーマ: 考えさせられる本 | ジャンル: 本・雑誌