fc2ブログ

このままでいいのか? 我が国の長期停滞

我が国の経済活力が低下して長い年月が経過したが、国として打開策を講じる意欲も決意も感じられず、このまま国力低下が継続するようで情けなくなる。私一人が喚いてもどうにかなることではないが、何とかしなければという思いから、主にネット情報から原因を集め、対策案として私見を述べた。

1 我が国の国際的地位の低下
我が国はここ20年くらい国際的な地位が低下し続けている。
野口 悠紀雄 :一橋大学名誉教授によると、日本の地位は欧州主要国より下で、南欧の上である。1人当たりGDPで見ると、日本は世界で第24位になる。
2020年の1人当たりGDP
国際通貨基金(IMF)によると、名目GDPで韓国はすでに2018年に日本を追い抜き、台湾は2009年に追い抜いている。
1人当たりGDP推移
1970年代の初めに日本は先進国になり、ピークは1990年代後半から2001年頃までの期間だった。その頃には、日本の数字はアメリカより高かった。ところが、2000年代になってからは、日本の指数は低下し続けている。

2 我が国の長期停滞の原因は何か?
① 勤労者の作業効率が悪い
日本生産性本部は、12月17日、OECD.Statデータベースなどをもとに分析している「労働生産性の国際比較 2021」を公表した。
「2020年の日本の時間あたり「労働生産性」がOECD加盟38カ国中23位、G7(先進国首脳会議)では最下位だということを日本生産性本部が発表した。その値は49.5ドル(約5,086円)で、米国は80.5ドル(約8,282円)の6割ほどの水準だという。」
「日本の生産性の低さは、労働時間が長く労働者数も多いのに、そもそもの『儲けが小さい』ことが背景にあります。日本企業は終身雇用制で正社員の解雇は難しく、余剰人員は多い。一方、欧米はそれと比較して3分の2ほどの人数で生産している。」
ブログにも書いたが、日本人の仕事嫌いは有名である。海外の研究者によるレポートもある。さらに、情報通信技術(ICT)・デジタル化が進まないことも生産性が低い原因であろう。

② 最新設備への投資不足
生産性の面では、経済成長に必要な第一要素は最新設備への投資である。1980年当時、韓国の各労働者は日本の労働者の23%の資本しか持っていなかったが、2020年までに韓国の労働者は日本の労働者より12%多く持つようになった。

③ 日本企業は「人材」に投資しなさすぎ
加谷珪一氏によると、「日本企業は人材投資水準が諸外国と比べて著しく低く、これが低成長の原因の1つとなっている。政府が指針を作成しなければならないという状況自体が問題ではあるが、少なくとも指針が策定されれば、投資の活性化にはつながるだろう。
日本企業における人材投資水準(対GDP比)はアメリカの20分の1、ドイツの12分の1となっており、しかも1990年代以降、投資金額を毎年減らし続けている。諸外国との差は拡大する一方である。」

④ ボスが長く牛耳っていて、若者にチャンスを与えない
海外での生活が長い中村祐輔氏によると、「日本が停滞しているのも、ムラ社会のボスたちが牛耳っているからだ。”和をもって尊しとなす”が行き過ぎると、ボス支配の談合による閉塞した世界につながるのは自明の理だ。
若い研究者にチャンスを与えてこそ、科学の発展が生まれ、この国からイノベーションが生まれる。自然発生的に生まれてくるのではなく、生み出すための制度・システムの改革が必要だ。戦後の社会制度が続く日本は限界にきている。
公正で公平な仕組み作りさえできれば、科学の世界は生まれ変わることができる。そして、日本再生が可能となる。日本にこそ、このような体制作りができる人材が必要だと思う。」

⑤ 女性活躍の機会が少ない
女性のしがらみに拘らない対応力、気配りの素晴らしさ、物事の核心の把握力は素晴らしい。しかし、男が牛耳っている我が国では、女性が頭角を現す機会は少ない。
今回の新型コロナウィルス騒動で各国の状況を見ると、男性よりも女性のリーダーシップが優れているようである。米国の経済誌『フォーブス』に、「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という記事がある。
「アイスランド、台湾、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド、デンマークではいずれも、女性が危機の中で真のリーダーシップを発揮し、世界に対して模範を示している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、女性には混乱に対処する能力があることを浮き彫りにした。」
危機に際して、なぜ男性より女性のリーダーが優れているのか?
男性は危機を利用して、多方面に目配りしながら自分に有利な策略を考えようとして、決断が遅れるのではないか。危機には、冷静に解決に向けてストレートな思考ができる女性が鏡となるのだろう。

⑥ 政府も民間も大胆な構造改革をしなかった
加谷珪一氏によると、「政府は、景気が悪化するとすぐに補助金や助成金といった救済策を導入して、本来なら市場から退散しなければならない企業を数多く生き残らせてしまった。潰すべき企業を早期に潰してしまえば、その資本や労働力はまた別のところに向かって、新しい産業を構築することができる。負の結果を恐れるあまり、政府はつねにリスクを先送りしてきた
そして今大きな問題になっているのが、デジタル革命、 IT革命といった「イノベーション」の世界の趨勢に日本企業がどんどん遅れ始めていることだ。
この背景には、企業さえも構造改革に対して消極的であり、積極的な研究開発に打って出ることができなかったという現実がある。欧米のような「リスクマネー」の概念が決定的に不足している。リスクを取って、新しい分野の技術革新に資金を提供する企業や投資家が圧倒的に少ない。」

⑦ 日本人の意思決定が遅いのは、教育のせい
内藤 忍氏によると、日本人は「自分だけ独自の行動をして周囲と軋轢を起こすことを恐れる人が多いことです。
例えば、居酒屋に入ると全員が同じビールを注文して一緒に飲み始める。そんな横並び意識が極めて強く、同調圧力が非常に強いという特徴があります。また、失敗をすることを極度に恐れる傾向があります。
新しいことをやって、失敗するよりは、前例主義で前にやった通りに無難に物事をこなしていったほうがメリットがある。このような考えが、失敗を恐れずチャレンジしようと言うマインドをつぶしてしまっています。
さらに、物事を決めるのにコンセンサスを重視する傾向もあります。トップダウンで決めるのではなく「聞く力」によって議論を尽くしてから、最終結論を決める。これは岸田首相に限りません。
このように、人と同じことをして、リスクをとらず、みんなで相談するという意思決定プロセスでは、時間がかかり、従来の方針を転換するのに長い時間がかかってしまいます。」

3 対策案
① 議員の年齢制限と女性枠の設定
上記の我が国の「問題点」を読むと、長期劣化の根は深く、我が国の各種の施策は簡単には変えられそうにない。時間はかかるが、まずは実行力のある有能な人材を排出しやすい制度作りから始めたらいかがか。
若手が増えて活躍しやすいように国会議員以下、市町村議員まで定年制を設ける(例えば70歳)。更に女性の社会進出が進むように、議員に占める女性の割合を30%以上とする優先枠を設ける

② オランダの制度をお手本とする
次に、私のブログで「日本の将来はオランダモデルを参考に」と題して2つの論考をご披露した。
 ・日本の将来はオランダモデルを参考に ①私が啓発された論考
 ・日本の将来はオランダモデルを参考に ②オランダモデルを覗いてみる

オランダは、大不況を以下のような大胆な改革で克服できた。

(1) 政府・経営者・労働組合の合意
オランダが変わるキッカケとなったのは、1980年代初めの“オランダ病”と言われる大不況であった。膨大な財政赤字をかかえ、失業率が12%にも達した。その克服のために、オランダの政府、経営者団体、労働組合連盟の三者は、以下のいわゆるワッセナー合意に達した。日本では考えにくい合意内容である。
・労働組合は企業業績向上のために、賃金抑制に協力する。
・経営者は雇用の維持と就労時間の短縮に努める。
・政府は労働者の所得減少を補うため、減税と社会保障負担の削減を行うとともに、財政支出のカットを行う。


(2) 待遇差別がないパートタイムとフルタイムの労働
その結果、奇跡的な立ち直りをしたが、その根幹には、「ワークシェアリング」がある。パートタイム勤務の社員が待遇面で受けていたいろいろな差別を禁止し、以下のようにした。
・同一労働であれば、パートタイムとフルタイムの時間あたりの賃金は同じにする。
・社会保険、育児・介護休暇等も同じ条件で付与される。
・フルタイム労働とパートタイム労働の転換は、労働者の請求によって自由に変えられる。
この制度の雇用形態の多様化と自由な労働時間の選択により、自分や家族の人生設計にそった働き方ができるようになった


(3) 活発なNPO(非営利組織)活動とその知恵
15年ほどでオランダのNPOは急成長を遂げ、GDPに占めるNPO活動の経済18%を超えた。日本で18%というと、自動車産業より遥かに大きな産業に相当する
普通のオランダ人に「NPOの会員になっているか」と尋ねると「10個以上」と答える人が珍しくない。日本で同じ質問をしても100人中10人が「1つ」と答える程度であろう。

NPOと政府、企業が対等なパートナーシップで話し合い、合意形成しながら社会を運営していく。私はこれを「オランダモデル」と名付けている。たとえばオランダでは、ODA予算の2割以上がNPOに提供されている。福祉だってNPOが実行している。フィールドの最前線にいるのは、いつもNPOで、そのため彼らは新たなニーズの変化をいちはやくキャッチできる。ニーズを満たす新たなアイデアをすぐに試し、それがうまくいけば、政府なり自治体なりが制度化する。そんな仕組みがオランダにはある。
役所の最前線の仕事が、大幅にNPOに任されている。それにより、変わりやすい社会のニーズを制度に反映しやすいので、オランダは「制度疲労なき成熟社会」に近づいているように思える。

アメリカと縁を切ろとは言わないが、我が国が抱える多くの問題を考えると、そろそろ真剣にヨーロッパ諸国の知恵にも学ぶ時期になったと思う。
スポンサーサイト



知らなかった「タネ」のことと今後が不安な日本の農産物

園芸の講習会に参加して驚いたことがあります。質問時間に、ある聴講者が「カボチャから取った種を植えたがカボチャが生らなかった理由を教えてください」と講師に質問したら、講師が「F1だからでしょうね」と答えました。
「F1」? 私には何のことだか分りませんでした。これが切っ掛けになって日本のタネ(種)の問題を知りました。

田と稲穂

1.F1種について
「たまな自然食品店」の「お役立ち情報」に「F1種」の特徴と問題が分かりやすくまとめられているので、以下に引用します。

「F1種とは」
異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種1代目のことをいい、ハイブリッド種とも呼ばれます(遺伝子組換え種とは異なります)。異なる親を交配させることで、次に生まれた子(第一世代の種)が親とは異なる新たな形質を持つ種子です。雑種の1代目には「雑種強勢」という性質が働くため、野菜の生育がよくなります。さらに、メンデルの法則によって、野菜の大きさや形、収穫時期がそろうようになる(=規格がそろう)ため、非常に効率が良くなることから、現代最も多く使用されている種です。 
【F1種の特徴】
1. 耐病性の品種など、常に改良されているので、特定の病気を避けやすい。
2. 品種改良されているので、一般に味にクセがなく食べやすい(風味が均一)。
3. 発芽や生育の揃いが良いので市場で売れやすく、大量生産・大量輸送・周年供給に適している。
4. 農薬・化学肥料を使うことが前提あるいは推奨されているものがほとんどなので、「自然栽培」には不向き。
5. F1の種から採取した種(F2種)になると、F1と異なる性質が現れるため、自家採種で同じ性質をもった種が取れず、毎年種子を購入する必要がある。
【「F1種」の問題点】
1. F1種の普及により種の多様性が失われつつある。
2. F1種に限らず世界のタネ市場が海外の大企業(モンサント、ダウ・デュポン、シンジェンタ)の寡占状態になっており、種子支配に繋がりかねない。
3. ほとんどのF1種は農薬・化学肥料を使うことが前提で作られている。
4. 一番の問題は、そもそもほとんどの人が固定種やF1種の事を知らないという点である。

2.日本の状況
わが国には、1952年、戦後の食糧の安定供給を図るために制定された種子法(正式名称は「主要農作物種子法」)があります。 米・麦・大豆の3種類を対象に、奨励品種の選定や原種の生産に都道府県が責任を持つことが定められた法律です。

農家が自ら生産した作物から種子を採取すること(自家採種)も可能です。しかし、同一品種の自家採種を何代も続けると、品質は少しずつ劣化していきます。良質な種子を育成するためには、農作物の栽培とは別に、種子のための育成をしなければなりません。それには膨大な手間と金が必要です。育成にかかる時間は長く、1つの品種を開発するのに約10年、増殖には約4年かかるといわれています。
そこで、農業試験場などの研究機関で、地域での普及を目指す優良な品種の「奨励品種」を育て、それを農業振興公社や種子センターといった公的機関が栽培し、採種農家が増産します。こうして栽培された種子が、各農家に安価に供給される──この一連の流れが、これまでのコメ、麦、大豆の種子のあり方でした。

ところが、現状の種子法は「民間の品種開発意欲を阻害している」という理由で、2018年4月に種子法は廃止となりました。政府決定から、わずか半年程度でした。
農林水産省が重要法案を提出する場合は、事前に農政審議会に諮り、パブリックコメントを募集するのが通例ですが、今回はそれらが無かったのです。不思議なことです。

恐らく、多くの国会議員は、この法案の内容や今後の日本の農作物、食料に及ぼす影響への大きさまで思いが至らなかったものと思います。

しかし、日本の農政に危機感を持った市民や生産者が声を上げ、自治体が国に意見書を出し、また種子法に代わる種子条令を制定する都道府県が以下の図のように増えてきました。


種子条令制定状況

3.最悪の想定シナリオ
政府の方針通りに「F1種」が日本の農産物を席巻するようになると、以下の最悪の状況になりうると予想されます。
1.海外の大手種会社から、農家は毎年、高価な「F1種」を購入し続けることになり、農家の収入が減る。日本の農産物が海外企業に牛耳られる。
2.「F1種」は多量の農薬と化学肥料を使うので、世界的なオーガニック志向に逆行する。農薬による環境汚染と人の健康への悪影響が拡大する。
3.種の種類が少なくなり、地域によっては限定されるので、地方色豊かな農作物が消え、さらに年によっては天候や病気の影響により特定の種の作物の収穫がゼロになり、飢饉が発生することがあり得る。
4.法律が変わり、遺伝子組み換え作物が海外から多量に流入する。

最近出版された山田正彦著「売り渡される食の安全」(角川新書)には、著者が元農林大臣だけあって、「F1種」に関わる広範な情報が分かりやすくまとめられており、参考にしました。