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日本の将来はオランダモデルを参考に ②オランダモデルを覗いてみる

オランダ地図



ヨーロッパ諸国の制度や問題は、単純に割り切って理解や説明できないことが多いです。そこがアメリカと違って、奥深いというか重厚というか、魅力があるところでもあります。国としては当然のことですが、昔から対外的には”ずる賢い”と思える知恵も備えています。

その中で特に関心がある「オランダモデル」について知りたいと思い、関連する本を数冊読んでみました。しかし、私には、広範囲なオランダモデルを分かりやすく書き示すのは難しいと思いました。
オランダモデルの本

オランダでは、基本的には寛容な精神のもとで、合意形成を重視して、合理的な制度を広範な分野でつくっています。しかし、最近では移民排除などの問題も抱えています。
私がオランダの制度で、特に重要と思った3点を、以下に書いてみます。

1.政府・経営者・労働組合の合意
オランダが変わるキッカケとなったのは、1980年代初めの“オランダ病”と言われる大不況でした。膨大な財政赤字をかかえ、失業率が12%にも達しました。その克服のために、オランダの政府、経営者団体、労働組合連盟の三者は、以下のいわゆるワッセナー合意に達しました。日本では考えにくい合意内容です。

① 労働組合は企業業績向上のために、賃金抑制に協力する。
② 経営者は雇用の維持と就労時間の短縮に努める。
③ 政府は労働者の所得減少を補うため、減税と社会保障負担の削減を行うとともに、財政支出のカットを行う。


2.待遇差別がないパートタイムとフルタイムの労働
その結果、奇跡的な立ち直りをしましたが、その根幹には、「ワークシェアリング」があります。パートタイム勤務の社員が待遇面で受けていたいろいろな差別を禁止し、以下のようにしました。

① 同一労働であれば、パートタイムとフルタイムの時間あたりの賃金は同じにする。
② 社会保険、育児・介護休暇等も同じ条件で付与される。
③ フルタイム労働とパートタイム労働の転換は、労働者の請求によって自由に変えられる。

この制度の雇用形態の多様化と自由な労働時間の選択により、自分や家族の人生設計にそった働き方ができるようになりました。

3.活発なNGO・NPO活動とその知恵
オランダのNGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)は政府からの補助金を受けるだけでなく、募金活動や寄付によっても活動資金を確保していますが、募金や寄付を受けるに足る財政管理や活動の監視ができているかどうかについて、公的に評価するシステムが確立され、公表されています。
日本では寄付に対する税額控除制度がなく、寄付を求める人や組織の信用情報がないので、NGO・NPOの活動への寄付は比較的少ないようです。

運河と風車

長坂寿久氏の「新しいシステムはオランダから生まれる」には、NPOに関して以下の記述があり、その内容に驚いたり、感心したりしました。

① オランダが「世界一NPOセクターが大きい国(全雇用者の7%)」であるということです。背景には、オランダの「水との戦い」の歴史があります。

② 普通のオランダ人に「NPOの会員になっているか」と尋ねると「10個以上」と答える人が珍しくありません。日本で同じ質問をしても100人中10人が「1つ」と答える程度でしょう。

③ NPOと政府、企業が対等なパートナーシップで話し合い、合意形成しながら社会を運営していく。私はこれを「オランダモデル」と名付けています。たとえばオランダでは、ODA予算の2割以上がNPOに提供されている。福祉だってNPOが実行しています。フィールドの最前線にいるのは、いつもNPOです。そのため彼らは新たなニーズの変化をいちはやくキャッチできる。ニーズを満たす新たなアイデアをすぐに試し、それがうまくいけば、政府なり自治体なりが制度化する。そんな仕組みがオランダにはあります。

役所の最前線の仕事が、大幅にNPOに任されているのです。それにより、変わりやすい社会のニーズを制度に反映しやすいので、長坂寿久氏の著書「オランダモデル」の表紙に書いてあるように、オランダは「制度疲労なき成熟社会」に近づいているように思えます。

アメリカと縁を切ろとは言いませんが、我が国が抱える多くの問題を考えると、そろそろ真剣にヨーロッパ諸国の知恵にも学ぶ時期になったと思う、この頃です。




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テーマ: 日本の未来 | ジャンル: 政治・経済

日本の将来はオランダモデルを参考に ①私が啓発された論考

風車とチューリップ

昔読んで、今でも気になっている論考があります。私には、日本国の目指すべき姿を示しているように思えるからです。これまで何回読み直したことでしょう。

その論考とは、故北澤 宏一氏(元科学技術振興機構理事長、元東京都市大学学長)が学士会の午餐会(2004年11月22日)で講演した要旨です。なお、北澤氏は東大教授のときは超電導研究で有名でした。
講演のタイトルは、「科学技術の新しいマーケット―――仲間と地域の活性化―――」です。

講演要旨と言っても、統計データなどもある論文に近いものです。これを読むと、マスコミ情報がいかにいい加減であったかを知らされ、我々にデータをもとに真の日本の姿を気付かせ、あるべき日本の将来像を提案する素晴らしい論考です。10年以上前の文章ですが、その内容は今でも説得力があり、私にはますます輝いて見えます。

日本では、1991 年(平成3年)2月から約20年以上にわたり低迷した期間を“失われた20年“と言いますが、この論考を読むと、その間は潤沢な資産がありながら、将来の国作りのプランを考えて、それに投資することなく過ごした無策の時代ということがわかります。しかし、今からでも遅くないので、若者が将来に希望が持てて、経済格差や世代間格差が拡大せず、多様な生き方を選択しやすい我が国のシステムづくりを進めるべきと考えます。

今回は、北澤氏の論考の概要を、原文の要所々々をピックアップして引用しながら、以下に紹介します。

(引用始め)
一九九〇年以来、日本は経済的な意味での閉塞感が続いています。日本は国際競争力がなくなったと言われます。
ところが、日本という国はこの二十年以上にわたって貿易で世界最大の十兆円程度の黒字をずっと出し続けてきました。一九九〇年以降の長期不況期間においても、毎年「まもなく輸出はだめになる。」と警告されつつ、結局はそうはなっていません。


図3

貿易黒字と所得収支黒字の二十兆円に近い黒字の内の一部を海外旅行とODAに使い、最後に残る約十兆円が海外投資にまわされます。海外純資産は毎年約十兆円増えていく構造です。世界のどこの国からみても、こんなに羨ましい国はないと言わざるを得ないのです。

国民が貯めた千四百兆円はなにかに使われざるを得なかったのです。問題は何に使うか、将来の子供たちを幸せにするようなことに使えるのか、それが実は問題だったと言うことになります。政府が使ったからいけないということでは決してないのです。一九九〇年代は、国民が巨額なお金を貯めたが、その良い使い道を見つけることができなかった時代ということになります

日本の産業別就業者数を見ますと、明治初期は、第一次産業の農業、漁業が九割以上でした。今では二パーセントラインです。次に第二次産業の製造業が勃興しましたが、一九七〇年頃に五割ほどに達したのをピークに減り始め、最近は第三次のサービス産業が六五パーセントにまで増加してきています。ただし、製造業で作られる価値が減ったわけでは決してありません。むしろ増えています。生産性の向上はそれほどに大きかったのです。

サービス業も、生産性を向上させ、そして現在、五パーセント近い失業者、すなわち労働力の余剰が出てしまいました。GDPが五百兆円程度であることを考えると、単純には、失業率五パーセントは二十五兆円分くらいの産業の不足を意味します。
それではこの五パーセントの人たちはどうすればいいのでしょう。単純に考えますと、第四次産業を興せばよいことになります。ただし、これまでの一次から三次産業とは質的に何か違うものでなければなりません。この第四次産業が作り出すべき新しい価値を、「第四の価値」と呼びたいと思います。

「第四の価値」は、したがって、仲間や地域の願いや正義感を実現することに使われる科学技術と関連するはずです。これからの科学技術は、個人の夢だけではなく、「仲間や地域の夢」を果たしていく。集団で夢を語ると日常個人では意識する事の少ない「正義感」のような価値観が人の行動を決める面が出てきます。

未来への胎動として、現在、急速に始まりつつあるNPOの活動に注目してみます。NPOの最大の特色は「集団の正義感」を基本として活動する法人であるということです。お金をとって活動しても構わないし、人を雇用することもできます。ただし、利潤が得られた時にはそれを経営者たちが分けてしまってはならず、本来の目的のために再投資しなければならないということです。「第四の価値」の定義は「集団で考えた時にのみ入手できる価値」でしたからNPOとは密接な関わりができるのは当然です。

まず、NPO経済を過小評価してはならないと申し上げたいと思います。私たちの心の中に「NPOやボランティア活動は国の経済の主要な部分にはなり得ない」と思っている人が多いからです

先ほど、日本の失業者数は三百五十万人と申し上げました。アメリカではNPOに雇用されている人がすでに一千万人もいます。アメリカの人口は日本の二倍ですから、同程度の規模のNPO活動が日本にあったら、日本には失業は生じないということになります。


図7

さらにすごいのはオランダです。ここ十五年ほどでオランダのNPOは急成長を遂げ、GDPに占めるNPO活動の経済比率は図7に示すように一八パーセントを超えました。日本で一八パーセントというと、自動車産業より遥かに大きな産業に相当します。日本の娯楽産業が全体でGDPの二割程度ですから、オランダ国民はNPOに日本の娯楽と同程度の重要性を与えているということができるのではないでしょうか


表


オランダのNPO活動活発化の最大の理由は、勤務時間の自由化(一九八二年の労使協定によるワークシェアリングの奨励)にあるとされます。余暇を得た国民がその時間を何に生かそうとするのか。その例として学ばねばなりません。

結局のところ、衣食の足りたひとびとはさらに幸せを求めて活動しようとします。その時にパチンコに行くしか生き甲斐のない国を目指すのか、NPO活動を通じて文化活動や環境・アメニティの改善、介護や青少年活動の支援などに時間を使うことのできる国を目指すのか、それは余裕のできた国がどちらを選ぶかの差ということができると思います。

個人では与えられた社会制度の中でしか行動できない。日本の個人はNPO活動の自由度を非常に限られた範囲でしか与えられていないと言えるのではないでしょうか。
いま、NPOへの寄付に対する税控除による支援策の導入が最も大切なことになるのではないかと思います。

本日は、「第四の価値」創成が今後の日本の経済活性化に大きな役割を果たし、失業を解消するための道であると考えられること、「第四の価値」創成の包括的な方向は「仲間と地域」の活性化と深く関わると考えられること、また、その方向は日本人の生き甲斐や若者の夢と関わるものであることをお話させていただきました。(引用終わり)
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